2026年7月、エクアドル・アマゾンの原生林で野生カカオの探索の進捗を報告します! この月の目的は、どの森に野生カカオが残っているのかを探し、住民から話を聞くことでした。雨、動物、そして「あそこにある」という伝聞情報。この3つに非常に苦戦した月になりました。
野生カカオ探索事業とは、エクアドル・アマゾンの原生林に自生する野生カカオを探し、キチュア族の住民が森を伐らずに現金収入を得る道をつくるための調査事業です。NPO法人ママノアマゾニアが、独立行政法人環境再生保全機構「地球環境基金」の助成を受け、現地パートナーである先住民キチュア族の農業組合WINAKとともに実施しています。
事業期間は2026年4月から2027年3月まで。これまでのレポート一覧はこちら
7月のレポート、4行まとめ
- 今季は実りが少なく、樹に残っていた実も動物が食べてしまっていました。
- 「野生カカオがある」と聞いていた場所のいくつかは、行ってみると別の種類の樹でした。現地では複数の種類がまとめて同じ名前で呼ばれています。
- 住民の多くが違法な金採掘に従事していて、野生カカオに関心が向かない地域もありました。
- 次のシーズンに向けて、収穫用の伸縮はしごと脚立を購入しました。野生カカオは高木で、実に手が届かないためです。
なぜ、森の中のカカオを探すのか
活動地はエクアドル・アマゾンの熱帯林です。原生林と、森をまねて作物を育てる伝統的な農園「チャクラ」が地続きで隣り合っています。
この地域は市場から遠く、現金収入を得る機会が限られています。その苦しさが、森を削る違法な金採掘へ人を向かわせる圧力になります。採掘は森を壊し、川を汚し、そこに暮らす人と生きものに影響を残します。
原生林には、昔からこの土地で育ってきた野生カカオが残っています。少ない本数でも価値を生み出せる可能性があり、木を伐らずに収入を得る選択肢になり得ます。そのためにまず「どこに、何本、どんな状態であるのか」を確かめる。それがこの事業の最初の仕事です。
森を歩くのは現地の技術スタッフです。地域の言葉が通じ、道を知り、住民と直接話ができる人が、この調査を行うことがとても重要です。








7月に、現場で起きたこと
雨で森に入れなかった
集落までは到着したものの、雨で足元が悪く、森の奥まで進めませんでした。証拠写真も残せませんでした。
案内してくれる人の不在
森の持ち主が留守で、道をよく知る人が誰もいませんでした。野生カカオの生えている場所は、案内がなければたどり着けません。
デモで橋が封鎖された
入口までは行けましたが、地域内の対立からデモが起き、橋の通行が止められていました。その日はどちらの森にも到達できませんでした。
動物が食べてしまっていた
樹に残っていた数個の実は、すでに動物に食べられていました。リスや夜行性のサルが多い場所では珍しくありません。
探していたカカオではなかった
「野生カカオがある」と聞いて歩いた先で見つかったのは、地域で森のカカオと呼ばれる別種の樹でした。
連絡そのものが取りにくい
インターネットがつながらない場所が多く、訪問の約束を事前に取り付けること自体が簡単ではありません。行ってみないと分からない、ということが起こります。
バイクが故障して動けなかった
移動に使っている古いバイクが故障し、現場へ出られない日がありました。舗装のない道を毎月走る負荷は小さくありません。
話を聞いてから、樹にたどり着くまで
「あの森に野生カカオがある」という話を聞いてから、実際にその樹を目で見て確かめるまでには多くの障害があり、7月はかなり苦労をした月でした。
7月に到達できたのは、多くの場所でSTEP 2からSTEP 3まででした。破線の2つには届いていません。
「野生カカオがある」と「探している種だ」は違う
この事業でいちばん時間を取られるのは、情報の確認です。
ある場所では、地域の人が野生カカオと呼んでいた樹を実際に見に行きました。確認できたのは数本で、それは別種のカカオ属の樹でした。キチュア語で「森のカカオ」と呼ばれるもので、探している野生種ではありません。商業的に売られたこともありませんでした。
別の場所では、電話では「ある」と言われた樹について、あとから「今年はほとんど実がない」と説明が変わりました。悪意があるわけではなく、森の状態は年ごとに大きく変わるからです。
だから毎月、人が歩いて現地で目で見て話して確かめる必要があります。
森へ入るより、採掘へ
7月には、そもそも野生カカオに関心が向かない地域もありました。
訪ねた先のひとつでは、住民の多くが違法な金採掘に従事していました。日中に集落を訪ねても人がいません。皆その仕事に出ているからです。森を歩いて野生カカオを探し、実を採って収入にするという働き方には、関心を示してもらえませんでした。
採掘は現金がすぐ手に入ります。森を歩いて実を集める仕事は、それに比べると手間がかかり、実る時期も限られます。同じ土俵で比べれば選ばれないのは当然だと言えます。
この事業が向き合っているのは、まさにこの状況です。森を伐らず、川を汚さずに、生活が成り立つ道をつくれるか。数字の上で採掘に並べるかどうかは、まだ分かりません。ただ、そこに野生カカオがどれだけ残っているのかを確かめないことには、比べることすらできません。
今季は不作、それでも花は多い
7月に巡回した範囲では、熟した実がほとんど残っていませんでした。今季は全体に果実量が少なく、わずかに実った果実も、熟した直後に時期を過ぎていました。ある樹には4個ほど実が残っていましたが、すでに動物が食べたあとでした。
ただし、悪い知らせばかりではありません。カカオは花が咲いてから果実が実るまでにおよそ4か月から6か月かかります。7月に見た花の多さは、そのまま次のシーズンの見通しになります。
7月に分かったのは「いまは実がない」であって、「ここに野生カカオはない」ではありません。




高い木から、どう採るか
森の野生カカオには、畑のカカオと決定的に違うところがあります。背が高いのです。
まわりの木と光を奪い合いながら上へ伸びるため、幹はまっすぐ細くなり、実は見上げる高さに付きます。手も棒も届きません。木に登れば採れますが、それは危険です。協力してくれる生産者には高齢の方も多く、登らせるわけにはいきません。
そこで7月上旬、収穫用の伸縮はしごと脚立を購入しました。生産者が木に登らず安全に実を採れるようにするための道具です。探索とヒアリングが中心だった7月に、次のシーズンへ向けた準備も進めることができました。



記録の取り方を、決め直した
7月の反省から、記録の取り方を整理しました。
これまで「訪問した」の一言で片づけていたところを、「集落まで行けた」「森の中まで入れた」「電話で聞いた」「人づてに聞いた」の四つに分けて残すことにしました。
あわせて、GPS地点、写真、移動した距離を毎回そろえて残します。雨の日でも記録を残せる装備が要る、という課題も現場から上がっています。
この調査を続けるために
森を歩き、樹を数え、記録を残し、道具を届ける。この活動は、みなさまからのご寄付に支えられています。
7月のように、目に見える成果が出にくい月もあります。それでも通い続けなければ、森のどこに何が残っているのかは分かりません。継続的なご支援をお願いいたします。
※当法人は認定NPO法人でないため寄付控除の対象にはなりません。
野生カカオ探索事業のレポート一覧を見る
よくある質問
野生カカオ探索事業とは何ですか?
エクアドル・アマゾンの原生林に自生する野生カカオを探し、キチュア族の住民が森を伐らずに現金収入を得る道をつくるための調査事業です。NPO法人ママノアマゾニアが、独立行政法人環境再生保全機構「地球環境基金」の助成を受け、現地パートナーである先住民キチュア族の農業組合WINAKとともに実施しています。事業期間は2026年4月から2027年3月までです。
2026年7月は何をしていたのですか?
どの森に野生カカオが残っているのかを探し、住民から話を聞くことが目的でした。この段階では収穫や買い取りは計画に入っていません。巡回した範囲では今季の実りが少なく、樹に残っていた数個の実も動物が食べたあとでした。
野生カカオと、畑で育てるカカオは何が違いますか?
高さが違います。畑のカカオは人の背丈ほどに仕立てるので手を伸ばせば実に届きますが、森の野生カカオはまわりの木と光を奪い合いながら上へ伸びるため、幹が細くまっすぐになり、実は見上げる高さに付きます。手も棒も届きません。
「あの森に野生カカオがある」という情報は、どうやって確かめるのですか?
現地の技術スタッフが実際に森へ入り、樹を見て確かめます。電話や人づての情報だけでは判断できません。7月には、野生カカオと呼ばれていた樹が実際には別種のカカオ属(キチュア語で「森のカカオ」と呼ばれるもの)だった例がありました。
地域の人は野生カカオの収穫に関心を持っていますか?
地域によって差があります。2026年7月に訪ねた先のひとつでは、住民の多くが違法な金採掘に従事しており、森を歩いて野生カカオを採るという働き方には関心を示しませんでした。採掘は現金がすぐ手に入るためです。森を伐らずに生活が成り立つ道をつくれるかどうかが、この事業の課題です。
なぜ収穫用のはしごが必要なのですか?
野生カカオの実が、手の届かない高さに付くからです。木に登れば採れますが危険で、協力してくれる生産者には高齢の方も多くいます。安全に採るため、2026年7月上旬に収穫用の伸縮はしごと脚立を購入しました。
調査ではどんな記録を残していますか?
GPS地点、写真、移動した距離を毎回そろえて残しています。また「集落まで行けた」「森の中まで入れた」「電話で聞いた」「人づてに聞いた」の四つを分けて記録し、確認済みの事実と未確認の情報を区別しています。

