【アーカイブ公開】10/4(土)エクアドルアマゾン野生カカオの調査方法紹介|オンラインセミナー

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開催後

オンラインセミナー開催レポート|野生カカオ及び森林樹木植林プロジェクト途中経過(2025年10月4日)

10月4日にオンラインセミナーを開催しました。今回は「野生カカオ及び森林樹木植林プロジェクト」の途中経過の報告です。野生カカオがどこにどの程度生息しているかの調査方法と調査結果を共有しました。詳しくは下記まとめと動画をご覧ください。

はじめに

エクアドルのアマゾン(ナポ県・スクンビオス県)で活動する現地NGO「Fundación Yaku(ヤクウム)」の調査・植林の取り組みと、Wiñak(ウィニャク)と連携した「野生カカオ(Cacao silvestre)」の現地モニタリング結果を共有しました。悪天候で川が増水する厳しい条件の中、チームが徒歩で片道二〜三時間をかけて山の急斜面に点在する区画を測定し、三十区画・七サイトでデータを収集。結果として、野生カカオは推定で一ヘクタールに約二十一個体が生育していることが分かりました。

セミナー中に紹介した写真・動画

セミナーの要点(三分で分かる)

  • 活動地域 アマゾンのナポ県・スクンビオス県で先住民コミュニティと協働(植林・再生)
  • 苗畑の多様性 約三百種の有用植物(食・経済・文化の価値がある樹種)を育成・配布
  • 測定デザイン 同心円型の区画を使用(中心木から半径二十mと四十mの二重区画)×三十区画・十七サイクルの計画
  • 移動条件 雨期で川が増水、徒歩移動は片道二〜三時間、現地滞在六〜七日
  • 主目標 ①野生カカオの個体密度推定 ②個体ごとの形質記録(樹高・胸高直径・株立ち数など)
  • 主要結果 一ヘクタールあたり約二十一個体を推定(線形よりも生態学的に妥当な「潜在モデル」に適合)
  • 形質の傾向 樹高は概ね十五〜二十mを中心に分布、胸高直径は概ね二十cm前後(外れ値四十mは除外候補)
  • 立地特性 渓筋・急斜面・岩の上など擾乱が多い微地形を好む傾向

現地の背景と意義

  • 先住民の食・薬・文化に根ざした多種混植(チャクラ)型の植栽・再生を推進
  • 果実や種子の「加工・付加価値化」を見据え、苗畑から地域の将来の所得・栄養・文化を復活
  • 野生カカオは動物による種子散布の影響が大きく、空間分布が疎で不均一
  • そのため「密度推定」「地図化」「形質データ化」が保全と利用(選抜・栽培化・遺伝研究)の土台となる

調査方法(詳説)

  • 区画 中心木を基準に半径二十mと四十mの二重区画(concentric plots)を設置
  • 測定項目 樹高(目測+経験則。密林で機材利用が難しいため)、胸高直径(DBH)、株立ち数(母樹とひこばえの区別)
  • 空間情報 各個体にGPSを付与し地理参照、後にGISで可視化・集計
  • 解析手法 Rで個体数と区画面積の関係をモデル化し、一ヘクタール(一万㎡)へ外挿
  • 品質管理 外れ値(樹高四十mの孤立点)は計測バイアスの可能性を検討し、解析からの除外を提案
  • 業務負荷 遠方区画は往復四〜五時間の徒歩、急斜面・濁流の渡渉などリスク下の作業

主要結果(数値と解釈)

  • 個体密度 一ヘクタールあたり約二十一個体(潜在モデルが実測に適合。線形モデルは理想化しすぎ)
  • 区画内の発見数 半径二十m区画でおおむね数個体、半径四十mで追加計測(総数を増やし推定精度を確保)
  • 樹高分布 中心は十五〜二十m。三十m級も散見。四十mは単独点で外れ値扱い
  • 胸高直径(DBH) 概ね二十cm近辺に集中。一部三十〜三十五cm級
  • 成長様式の示唆 林冠到達後は樹高伸長が鈍化し、幹の肥大成長(DBH増加)に資源配分が移行
  • 立地 渓谷・急斜面・岩上に偏在。光条件・土壌安定性・水分環境が影響

チームと現場のストーリー

  • 構成 Yakuの技術者・Wiñakの現地メンバー・学生ボランティアなど計五名規模で編成
  • 行程 増水した川をロープで渡る→集落で六〜七日滞在→一日数区画を測定→夜間にGISとRでデータ整理
  • 学び 密林では樹高測定器の視通が取りにくく、経験に基づく目測+スケール化が現実的。誤差管理のため外れ値検出を厳格に実施

データとエビデンス(抜粋メモ)

  • 区画数 三十
  • サイト数 七(集落内の複数所有地を横断)
  • 滞在日数 六〜七日
  • 徒歩移動 片道二〜三時間(遠い区画は三時間)
  • 主要モデル 潜在モデル(非線形の方が実測に沿う)
  • 推定密度 約二十一個体/ha
  • 樹高中心 十五〜二十m
  • DBH中心 約二十cm
  • 外れ値 樹高四十mの単独点は除外候補(人・機材バイアスの可能性)

Q&Aで出たポイント

  • なぜ急斜面や渓筋に多いのか 光・水・土壌の微地形条件に適応。競争回避と散布経路も関与
  • 外れ値の扱い 単独の極端値は解析上は除外し、現地再検証やドローン計測で再確認する
  • 測定誤差の宿命 密林内は視通が取りづらく、経験則+複数人のクロスチェックで誤差を抑制

クレジット

  • 現地パートナー Fundación Yaku(ヤクウム)・Wiñak(ウィニャク)
  • 発表・記録 カルロス・ベラ(Yaku)ほか現地チーム、通訳・運営協力者
  • 出典 セミナー発表内容・現地記録に基づく(議事録・文字起こし)

上記画像をクリックすると資料が開きます

開催前

テーマ:エクアドルアマゾン野生カカオの調査方法紹介

日時:2025年10月4日(土)AM8:00-(日本時間)

日時:2025年10月3日(金)18:00-(エクアドル時間)

主催:NGOママノアマゾニア

共催:ママノチョコレート

スピーカー:NGO YAKUMカルラさん

ズーム登録はこちら:https://us02web.zoom.us/meeting/register/fxw74WQHSlGQB0yUj0PkLw

発表内容:

NGOママノアマゾニアではエクアドルアマゾンの野生カカオ保全プロジェクトを進めています。

最も近い道路からぬかるんだ道を3時間以上歩き、谷川を越えて到着する標高900メートルのこの地域では、手付かずの原生林の中に多数の野生カカオが存在しており、大きいもので25-30メートルほどもあります。

カカオはすべて種が白いホワイトカカオで、暫定的な遺伝子分析ではクリオロ種の祖先と言われているクラレイ種系に分類されることがわかりました。

この地域では、約1,400haの山を28の先住民キチュア族の家族が守っています。

野生カカオ保全を進めるため、熱帯雨林地域の樹木のGPSマッピング等に知見のあるNGO YAKUMに協力を依頼しました。約10名でおよそ10日間に渡って現地の人々とともに歩き、測定をし、データにまとめていただきました。今回は、その大変な作業の結果を皆さんにご報告させていただきます。

エクアドルには美しい大自然があると同時に、違法採掘が堂々と行われています。

エクアドル南部のカカオの起源地であるサモラチンチペ県にも野生カカオがありますが、違法採掘による川汚染や木の伐採、山の破壊を至る所で目にします。

私たちの活動場所はエクアドルの中央北東部のナポ県です。

大自然の美しいアマゾン熱帯雨林が広がるおだやかな地域ですが、野生カカオが生息する原生林の山の麓にも違法採掘現場は迫っています。

キチュア族の人々が土地を売らないでも生活ができるように、違法採掘への協力を依頼されても断固として断ることができるようにするためには、自然への敬意や強いコミュニティの他、収入が必要になります。野生カカオは、豊かな自然が残してくれた希望です。この野生カカオ保全プロジェクトは、ただ保全するのみならず、「原生林の循環経済」のような新しい形で、現地の人々がずっと自然を守りながら豊かな生活ができるようになるための希望だと考えています。

ぜひ、ご参加ください。

NGOママノアマゾニア

代表理事江沢孝太朗

『野生カカオとその他樹木の再植樹による熱帯林の保全と拡大(合計6000本)』

資金拠出:国土緑化推進機構(緑の募金)及び募金賛同者の皆さん

プロジェクト:SDGs貢献使途限定募金による応援プロジェクト

活動地:エクアドルのアマゾン地域ナポ県

活動範囲:1400ha

目的:野生カカオとその他樹木の再植樹による熱帯林の保全と拡大(合計6000本)

実施団体:NGOママノアマゾニア

協力団体:非営利団体WINAK組合、NGO YAKUM、コミュニティメンバー