【podcast #10】野生カカオ探索レポート 2026年7月・8月

ポッドキャスト「カカオのディープすぎる世界」第10回は、地球環境基金の助成を受けて進めている野生カカオ探索事業の、7月と8月の報告です。雨とバイクの故障と伝聞情報に振り回された7月から、これまで誰も採っていなかった野生カカオが約500本まとまって残る森が見つかった8月まで、2か月分を事務局長と2人で話しました。

野生カカオ探索事業とは、エクアドル・アマゾンの原生林に自生する野生カカオを探して、先住民キチュア族の人たちが森を伐らずに現金収入を得る道をつくるための調査事業です。

独立行政法人環境再生保全機構の地球環境基金の助成を受け、現地パートナーである先住民キチュア族の農業組合ウィニャック(WINAK)と、2026年4月から2027年3月まで取り組んでいます。これまでのレポートはこちら。

エクアドル・アマゾンの森で、野生カカオについて住民から話を聞く様子
森を案内してもらいながら、どこに何本あるのかを聞き取っていく。

この回の3行まとめ

  1. 7月は雨と、携帯の通じない場所と、「野生カカオがある」という伝聞情報に苦戦した。
  2. 品種の見分け方をまとめたフォトブックを作り、訪問のたびに住民へ説明した。
  3. 8月、これまで誰も買いに来なかった野生カカオが約500本まとまって残る森が見つかった。

本エピソードは2026年9月16日(水)公開予定です。

LISTEN TO EPISODE 10

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YouTube、Spotify、アマゾン Music、Apple Podcastsでお聴きいただけます。写真を見ながら聴ける動画版もあります。

話した人

江沢 孝太朗

NPO法人ママノアマゾニア代表理事。2024年に現地を訪ね、原生林を歩いて野生カカオの調査に立ち会っている。

渡邊 ゆり恵

NPO法人ママノアマゾニア事務局長。JICAでの勤務を経て南米と北米に暮らし、現在はグアユサ茶のブランドZengyを立ち上げている。2024年に現地を訪問。

CHAPTERS

目次

  • 出演は、事務局長の渡邊ゆり恵さん
  • 野生カカオ探索事業とは。原生林を歩いて、どこに何本あるかを確かめる
  • 7月は苦戦、8月は約500本の森との出会い
  • 活動地はエクアドル・ナポ県。原生林とチャクラが地続きで隣り合う
  • ぬかるんだ道を4、5時間。買い付けに来る人がいない
  • エクアドルの平均世帯所得の10分の1以下
  • 金の違法採掘。原生林の真横に穴が開いている
  • アマゾン・ウォッチのデータ。2015年から2021年で累計7,495ヘクタール
  • なぜ野生カカオなのか。木を伐らずに収入を得る選択肢
  • 森を歩くのは、現地パートナーの技術スタッフ
  • 7月の苦戦。雨、携帯もインターネットもない、デモによる通行止め
  • 「野生カカオ」と呼ばれるものにクプアスなど別の種類が混ざる
  • 品種を見分けてもらうフォトブックを作った
  • 森の野生カカオは20メートルから30メートル。手も棒も届かない
  • 伸縮はしごと、先にナイフの付いた長い棒を支給する
  • 8月の改善。記録アプリ、手書きの記録用紙、フォトブック
  • 8月最大の発見。誰も買いに来なかった野生カカオが約500本
  • 年間およそ300キロ。生の果実の重さで、乾燥豆だとおよそ100キロ
  • いい噂も悪い噂も、コミュニティを早く回る
  • 一軒一軒が遠い。地道な訪問が線になっていく
  • データより重要なのは、人間的な関係を築くこと
  • はしごを配る。助成金だけでは賄えない部分がある
  • 探索を続けるための寄付を、目標20万円で募っています
  • 会員になるという選択肢もある
  • オンラインセミナーと、アマゾンの食を体験するイベント構想

なぜ、森の中のカカオを探すのか

活動地はエクアドルのナポ県、アマゾンの熱帯林です。原生林と、森をまねて作物を育てる伝統的な農園「チャクラ」が地続きで隣り合っています。この事業で歩くのは原生林のほうです。

この地域は市場から遠く、買い付けに来る仲買人がいません。集落そのものが遠く、集落から住民が所有する森までの道のりもまた遠い。2024年に現地を歩いたときは、ぬかるんだ道を4、5時間進みました。ナポ県に暮らす先住民の生活水準は、エクアドルの平均世帯所得の10分の1以下とされています。

エクアドル・アマゾンの赤土の道と丘陵
舗装のない赤土の道。
日中に人のいない集落の広場
日中の集落。人は仕事に出ている。
森が削られてむき出しになった赤土の崖
削られた赤土。

現金収入の手段が限られていることは、森を削る金の違法採掘へ人を向かわせる圧力になります。現地を回ると、原生林のすぐ真横に穴が開いています。木が刈り取られ、明るい黄土色の泥が露出して草も生えていない場所が、川から入りやすいところを中心に点在しています。国際NGOのアマゾン・ウォッチによれば、2015年から2021年にかけて鉱山開発と金の違法採掘による森林損失が5,616ヘクタール増加し、2021年時点で累計7,495ヘクタールに達しています。

森が失われれば川が汚れ、そこに暮らす動植物と人に影響が残ります。この地域の採掘は水銀を使わないものが多いものの、使えば人体への影響はさらに大きくなります。

原生林には、昔からこの土地で育ってきた野生カカオが残っています。長いあいだ価値があるとは見なされてこなかったものですが、少ない本数でも価値を生み出せる可能性があり、木を伐らずに収入を得る選択肢になり得ます。そのためにまず、どこに、何本、誰が持っているのかを確かめる。それがこの事業の最初の仕事です。

7月。雨と、携帯の通じない場所と、別の種類のカカオ

7月は雨が多い月でした。熱帯雨林なので雨そのものは当然ですが、足元が悪く森の奥まで進めない日が続きました。インターネットが通じず携帯を持っていない人も多いため、日時と場所を決めて訪ねても会えないことがあります。地域内でデモが起きて橋の通行が止まったこともありました。移動に使っている古いバイクの故障も重なっています。

原生林の樹冠と差し込む光
樹冠と差し込む光。
原生林の林床と幹
雨のあとの林床。
林床に積み上がった、動物に食べられたカカオの殻
林床に残る殻。
動物に齧られて割れた野生カカオの実
齧られて割れた実。

もうひとつ時間を取られたのが、情報の確認です。住民が「野生カカオ」とひとくちに言っても、実際には複数の種類がまとめて同じ名前で呼ばれています。カカオはテオブロマ属のひとつですが、同じ属には別の果物もあり、聞いて歩いた先にあったのがクプアスという別の品種だったこともありました。

7月に分かったのは、現地の人たちが品種名や品種の特徴をほとんど知らないということでした。名前で聞き取りをしても、確認済みの事実にはなりません。

森の野生カカオは、手も棒も届かない高さに実をつける

畑やチャクラで育てるカカオは、手でもぐか、短い棒でつつける高さに仕立てます。森の野生カカオは違います。まわりの木と光を奪い合いながら上へ伸びるため、平均で20メートルほど、大きいものは30メートルに達し、実は見上げる高さに付きます。

20メートルを超える野生カカオの高木
実は見上げる高さに付く。
樹冠に下がる野生カカオの実
首を反らせないと見えない。

これまでは木に登って収穫することがありましたが、危険が伴います。協力してくれる生産者には高齢の方も多く、登らせるわけにはいきません。そこで7月に、生産者が木に登らず安全に実を採れるよう、開くと5メートルほどになる伸縮はしごと脚立を購入しました。あわせて、先にナイフの付いた長い棒も用意しています。うまく機能するかを見ながら進めていく段階です。

生産者へ引き渡すために購入した収穫用の伸縮はしご
生産者が木に登らずに採れるようにするための道具。

8月に変えたこと。記録アプリと、手書きの用紙と、フォトブック

7月の反省から、記録の取り方を決め直しました。KoBo Collectという調査アプリを現地と共有し、GPS地点、写真、メモ、どんなカカオがあったか、なかったか、住民の意欲がどうかを、毎回そろえて残すようにしています。あわせて1枚の記録用紙のテンプレートを作り、現地で印刷して手書きで細かく書いてもらえるようにしました。

そしてもうひとつが、フォトブックです。住民が「野生カカオ」と呼ぶもののなかで、商業的に価値が認められ、生計の支えになり得るのはクラレイ種のホワイトカカオです。実の形、色、大きさ、切ったときに白いという断面の特徴を写真で並べ、訪問のたびに説明していきました。名前ではなく現物で判断してもらうための道具です。

品種の見分け方をまとめたフォトブックを受け取る住民
実の形、色、断面を写真で並べたフォトブック。

この準備によって、住民との認識のずれが少しずつ減っていきました。

誰も買いに来なかった野生カカオが、約500本

8月、家族で所有している森に野生カカオが約500本あるという話を聞きました。実際に品種を確かめたところ、探していたクラレイ種でした。この森では毎年実がなっていましたが、これまで買いに来る人がおらず、熟した実はそのまま落ちて森の動物たちの食べものになっていました。

野生カカオが自生する原生林の内部
野生カカオが自生する森。
調査のために原生林を歩く様子
森の奥まで歩いて確かめる。
森を案内してくれた家族と野生カカオの樹
森を案内してもらう。
確認できた本数約500本1軒の家族が持つ森で
年間の収穫見込み約300kg生の果実の重さ。聞き取りと現地確認にもとづく推定
乾燥カカオ豆に換算約100kg年ごとの天候や動物の食害で変わる

そんなに価値があるとは思っていなかったけれど、ぜひ協力していきたいし、これを使って生活を良くしていきたい。

森の生きものにとっては、実が落ちて食べられるのが自然な姿ですし、人がすべてを採る必要もありません。ただ、放っておかれた実の一部でも、木を伐らずに家計を支える収入に変えられるなら、森を残す理由がひとつ増えます。畑を広げるために森を削るのでもなく、違法な金採掘に出るのでもない選択肢が、はじめて具体的な話になりました。

この家族は直接金の採掘に従事してはいません。それでも、野生カカオを売って収入になることが分かれば、その話は横に広がっていきます。コミュニティは噂が回るのが早く、それはいい噂も悪い噂も同じです。ここを起点に広がっていく可能性があります。

記録が線になり、次に訪ねる家が決まる

調査は地道な作業です。家と家は離れていて、道路のあるところから家まで遠く、家から森まではさらに遠い。一軒あたりにかかる労力は小さくありません。それでも記録を残していくと、点だったデータがだんだん線になり、次の月にどの家を訪ねるか、隣の家に回るか、隣のコミュニティへ行くかという計画が立てられるようになります。

苗床の前で話を聞く様子
苗床の前で。
苗床での聞き取りの様子
聞き取りを重ねる。
野生カカオの樹を前に話を聞く様子
樹を前にして確かめる。

データより重要なのは、現地パートナーである組合の技術スタッフが、キチュア族の家族と直接話し、人間的な関係を築いていくことです。地域の言葉が通じて、道を知っていて、住民と直接話ができる人でなければできません。来年の野生カカオを買ってくれる相手がいるのかという見通しを持ってもらい、背の高い木からどう収穫するのか、いつ集めるのかを一緒に考えていく。商業化に向けた道筋をつけることも、この事業に含まれています。

この調査を続けるために

森を歩き、樹を数え、記録を残し、道具を届ける。この活動は地球環境基金の助成と、みなさまからのご寄付に支えられています。助成金だけでは賄えない部分が当然あり、そこをご寄付で成り立たせています。

8月のように発見のある月もあれば、7月のように目に見える成果が出にくい月もあります。何が起こるか分からないのが森です。その状況に備えるためにも、継続的なご支援をお願いいたします。探索を続けるための寄付を、目標20万円で募っています。

現在の寄付額¥54,000
27% 達成
目標金額 ¥200,000あと¥146,000
最終更新日:2026年11月8日

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※当法人は認定NPO法人でないため寄付控除の対象にはなりません。
野生カカオ探索事業のレポート一覧を見る

よくある質問

野生カカオ探索事業とは何ですか?

エクアドル・アマゾンの原生林に自生する野生カカオを探して、先住民キチュア族の人たちが森を伐らずに現金収入を得る道をつくるための調査事業です。地球環境基金の助成を受け、現地パートナーの農業組合ウィニャックと2026年4月から2027年3月まで取り組んでいます。

クラレイ種とは何ですか?

この事業が探している野生カカオの品種です。ホワイトカカオとも呼ばれます。住民が「野生カカオ」と呼ぶものには複数の種類が含まれるため、8月は品種の見分け方をまとめたフォトブックを作り、訪問のたびに住民へ説明しました。

約500本という数字は確定したものですか?

いいえ。聞き取りと現地確認にもとづく推定です。年間およそ300キログラム、乾燥カカオ豆でおよそ100キログラムという収穫見込みも同様で、いずれも生の果実の重さで表した推定値です。実際の収穫量は年ごとの天候や動物の食害で変わります。次のシーズンに実際どれだけ採れたかは、あらためて記録して公開します。

なぜ、はしごを配るのですか?

森の野生カカオは平均20メートル、大きいものは30メートルほどに伸び、実は手も棒も届かない高さに付くためです。これまでは木に登って収穫することがありましたが、協力してくれる生産者には高齢の方も多く、危険が伴います。生産者が登らずに安全に採れるようにするための道具です。

金の違法採掘は、どのくらいの規模ですか?

国際NGOのアマゾン・ウォッチによれば、2015年から2021年にかけて鉱山開発と金の違法採掘による森林損失が5,616ヘクタール増加し、2021年時点で累計7,495ヘクタールに達しています。現地では原生林のすぐ真横に、木が刈り取られて泥が露出した場所が点在しています。

寄付はどのように使われますか?

森を歩いて樹を数える調査、GPS地点と写真の記録、そして生産者へ渡す収穫用の道具に使われます。この事業は地球環境基金の助成を受けていますが、助成金だけでは賄えない部分があり、そこをご寄付で支えていただいています。当法人は認定NPO法人でないため、寄付控除の対象にはなりません。

写真つきの詳しい活動レポートは、2026年7月のレポートと2026年8月のレポートをご覧ください。次回は9月の報告をお届けします。